■第四夜(その3)■ 神話の崩壊

2009/07

下図では「車体、シート、後輪」を一体化し、ライダーは簡略化してありますが、重心位置を示すマークがバイクとライダー別々にある所に注目してください。
通常、我々一般ライダーがバイクに乗る際にはシートに座っており、下半身は車体にホボ密着しています。つまり、車体と下半身は同じ【慣性系】だと考えて良いと思います。

【慣性系】とは、言葉としては「ギャル系」や「山○組系」と同じ(笑)で、先に書いた『慣性の法則』が成り立つ座標系を言い、地球上での見かけで言えば『走るバイクは一つの慣性系』と見なせ、『慣性系に対して等速度運動する座標系もまた慣性系とみなせる』という原則もあります。

バイクに乗れば車体とホボ密着する下半身に対し、上半身は可動範囲が広く、意識して前後左右に動かせます。しかも上半身はバイク本体の動きに対して大きく影響を与えるほどの質量があり、それが車体側と別個でも動く=加速度運動できる物体ということで、「下半身+バイク」という『慣性系』の上に「上半身」という『別の慣性系』が乗っている』としてそれぞれを分けて描いたのですが・・・・・・ワケわかりませんね(笑)
走行中、タンクにお腹をべったりつければライダーとバイクで『一つの慣性系』になり、ひざ下で車体をホールドした状態でシートから腰を浮かせてみれば、二つが『別々の慣性系』になる・・・・という説明でイメージしてもらえるでしょうか?!してもらえると判断して続けますよ〜(w
ただし、これは我々が目で見て観測できる範囲内での話で、アインシュタインの【一般相対性理論】では「この世に慣性系など無い」となっており、その辺はもう私には「まるでお手上げ!」なので、無視しときます(笑)

荷重イロイロ・1さて、図(1)は『静止した状態』で【外足荷重】しようと頑張っているところです。
【慣性力(遠心力)】が無いので力学的に見れば右に倒れてしまう状態ですが、仮に車体が倒れないように地面に接着剤で固定してあり、乗り手も鬼のように車体を【外足ホールド】していたとしても、この姿勢を維持するのはかなりの「苦行」と言えるでしょう。
言うまでも無くこの状態は【外足荷重】以外のナニモノでもないですが、【外足荷重】と【外足ホールド】は言葉として違う意味なのはもちろん、現象、行為としても別と考えたほうが混乱が無いでしょう。
飼い犬に『ネコ』と名前をつけるのは勝手ですが、それで猫が「ワン♪」と鳴くことはなく、「種としての犬は犬、猫は猫」以外にはなり得ないのでお間違え無きよう。

荷重イロイロ・2図(2)以下は旋回中、【遠心力】がかかっている状態です。
実際の走行中、私たちはシートに座っているのでこんな妙な乗り方をする人はいないでしょうが、言葉通りに【外足荷重】を解釈するとこう描かざるを得ません。「俺様の考える【外足荷重】はこんなもんじゃねぇ!!」と言う人は、お手数ですが■第二夜■から読み直してください<(_ _)>

重心にかかる慣性力の方向より外側に【荷重】がかかれば、重心は外へ回転しようとすることは『運動の法則』により明らかであり、この場合バイクを起こしたいシーン・・・・コーナ立ち上がりやS字の切り返しでこういう方向へ【荷重移動】する、または【加重】するのは効果的でしょうね。
もしここで、【外足】で図(1)のような方向に【荷重】をかけたくとも、【遠心力=慣性力】が加わっている状態では(■第四夜(その2)■の“ウェーブスウィンガー”のように)『荷重のかかる向き』が変わるので、何か「超自然的な力」でも使わない限り、実現不可能です。

荷重イロイロ・3 図(3)は、■第四夜(その1)■でも出てきた「見せかけのリーンイン」です。
図(2)よりややマシな旋回状態に見えますが、この方向に外足を踏ん張ったり、モモをシートに押し付けるような【加重(入力)】してもバイク自体に支点・作用点もあるため『作用・反作用の法則』により、上半身がイン側に入って【チカラ】は相殺されてしまいます。
タイヤの接地面にも外足で【加重】した場所にもバイクを起こすような方向へ力が働いてしまうので、『曲がりたい時にかけるチカラ』としてはちょっと効率的とは言い難いですね。
なにより、バイクの上で「この方向に常に【加重(入力)】し続ける」ということは力学的には不可能に近いです。
ただし、図(2)と同じくバイクを起こしたい、あるいは(■外伝■に書いたような)瞬間的にバイクを起こしたい場面では有効な動きと言えます。

荷重イロイロ・4 【荷重】をかけるのは無理でも、図(4)のように車体方向へ瞬間的な【加重(入力)】はできます。
これも図(3)と同じく、外足をバイクの上で【加速度運動】をさせたことになり、上体はその【反作用】で上体は外へ逃げ、(■第二夜■での机の例と同じく)バイクは一瞬リーンアングルを深めるでしょうが、この旋回状態でバランスしているならば一過性のアクションに過ぎず、何か「次の動作」を起こさなければすぐに元の状態へ戻ってしまいます。

荷重イロイロ・5 図(5)はシートから腰を浮かせてイン側ステップに【荷重】した、いわゆる【内足荷重】の極端な例を描いてみました。
極低速のトライアル競技ではこの程度は当たり前ですが、常識的に考えれば我々は普段シートの上に座っているので、これは非現実的な例として見てください。ただ、安全な場所で、浅いリーンアングルでこれを試してみれば、何か「発見」があるかもしれません。

荷重イロイロ・6 図(6)は図(3)からシート上面イン側に【荷重移動】したものです。
外足にも内足にも【荷重】していませんが、どこから見ても誰が見てもごく当たり前のコーナリング時のフォームではないかと思います。
普通にシートに腰掛け、『シート上面イン側→タイヤ接地面』に真っ直ぐ荷重をかけて【遠心力】より【向心力】が若干勝った状態でリーンアングルとバランスしつつバイクがイン側に向かう、効率的な旋回状態と言えるでしょう。
この時、外足に【荷重】をかけたりすれば図(2)や図(3)の状態に近くなり、旋回力は弱まるということです。

荷重イロイロ・7 図(7)では、図(5)の状態から外足をステップから外してみました。
シートに乗った外足のモモと内足ステップで身体を支えているので、イン側ステップの支えが無いとバイクから転げ落ちてしまいそうに見えますが、実際は【遠心力】がかかって【荷重】のほとどはシート上面へかかっているのでそうはなりません・・・・・で、これってどこかで見たことありませんか?

これが■前夜■で紹介した『マモラ乗り』です。
「外足をステップから外す」という見た目のインパクトに惑わされますが、『マモラ乗り』は基本から外れた奇策でも邪道でもなく、我々のやっている普通のコーナリングと同じ線上にあったんですね。
もちろん2スト500ccマシンと我々のバイクとはエンジンパワー、車体剛性、タイヤのグリップなどのレベルは大きく違いますが、やっていること、やろうとしていることの方向は同じです。
ではなぜ他のライダーはそうしないのでしょう?

「外しても外さなくても同じなら、どっちでもやり易いほうでイイんじゃネ?!」
・・・・・たぶんそういうことだと思います(笑)
ただし、この乗り方では地面に近い位置に【荷重】をかけるポイントがあるので、意図しない不意のスライドが起こった場合それに対応するのはかなりの反射神経を必要とするでしょう(レコード盤の例で椅子の足がもっと短ければ、長い足の椅子と比べて小さなスライドでもリーンアングルの変化は大きくなりますから)。


長かった■第四夜■でしたが、リーンアングルに関わらず一般的なバイクの一般的なコーナリングで、

定常円旋回中のライダーがそれを維持しようとする場合、
【外足荷重】も【外足加重】もする必要は無い

ことは理解してもらえました・・・・・よね?!
「【外足荷重】が基本じゃないとしたら・・・・・じゃあ【内足荷重】が基本なのか?」
いやいや・・・・『右じゃなければ左』というのは少々短絡的に過ぎます(笑)

サーキットならイザ知らず、実際に我々がツーリング先で経験するコーナリング中(進入〜脱出)で、定常円旋回をしている時間なんてホンの数秒だけです。
実際の走行では進入でインステップ先端を踏み込んだり、立ち上がりや切り返しでアウトステップを蹴り出したり、車体ホールドのために足首を捻ってステップ付け根を押さえつけたり・・・・・と、その時の状況や短い局面で外足に【荷重】したり、内足に【荷重移動】したり【抜重】することは多々あります。それは様々なシーンで『楽に運転する』ために有効なので私も使わせてもらってますが、私の場合あくまで「キッカケ作り」や「補助的な入力」に留まっています。

そういったステップ操作の有効活用(いつ、どこで、どのタイミングで外(内)足に【荷重(加重・抜重)】するのか?)を解説するのは、雑誌やWebで数多く取り上げられているのでソチラに任せるとして、一つだけ確実に言えるのは、 【基本的】にはどちらの足にも『コーナリング中、常に』、意識的に『荷重をかけ続ける』必要は無いということです。
意識するとしたら足では無く、『骨盤の前後左右の傾き』『シート上面への荷重のかけかた』なんですが、それは実際にバイクに乗って色々試して楽しんでください。

次回は、もう少し実際のバイクに近い状態で考えてみます。

■第四夜(その3)■ 神話の崩壊

Back to Site Top


"Aquilarium" AKIRA YOKOYAMA's Web Site


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送