■異聞(追加・壱)■ 究極奥義【内足外し】

2009/12


2008年辺りから時たま、“Moto-GP”でバレンティーノ・ロッシ選手がコーナー進入(ブレーキング途中〜リーニング初期)時にイン側の足をステップから外し、ダラリと垂らすシーンが見られるようになり、2009年になってストーナーやペドロサなど、他のライダーもやりはじめた。
http://youtu.be/fcSulZEGCgA

(↑動画でリプレイするシーンと最後のシーンの比較してみると「何か」が分かるかも?)

他の場面も観ていると、連続したコーナーではやらずに、そこそこスピードの乗る直線から低速(といっても100km/h以上)の単独コーナーに限られるようで・・・・・。しかし、この動作についてTVでの解説は短くて曖昧、ネット上でも様々な解説が飛び交ってます。曰く・・・・・。
モテギの6コーナーかな?

ターンイン直前ですね

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(スポンサーの都合で解雇された現役Moto-GPライダー)が興味深い事を言っていた。
最近コーナー手前でイン側の足をステップから外すのは、フロントに掛かり過ぎた荷重を抜き、止まりやすくかつ曲がりやすくなるそうです。
本人はやっていなかったから「(誰かから)聞いた話」と言っていた。高橋裕紀
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ブレーキング時のマシン(特にリア)を安定させるためです。
ハードブレーキング→フロントがフルボトム→内足を外す→フロントの加重が抜ける・リアが安定する。 ってな感じです。
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ロッシも強いブレーキを掛ける訳ですが(中略)ブレーキング中に、リアタイヤが浮いてしまう。
リアタイヤが浮いてしまった場合、シートに体重を掛けてリアタイアを沈めたいのですが、既にブレーキング中ですので、余り他の事は出来ない為、内足を外します。
内足を外す理由は、ブレーキング中にリアタイヤが浮いてしまった時には、ライダーがシートに体重を掛けてオートバイを抑える訳ですが、シートに荷重を掛けるのは、単純に言えば両足を外してしまえば一番簡単なのですが、コーナリング手前のブレーキング中である事を考えると、オートバイが滑った場合、外足を踏ん張らなくてはならないので、結果的に内足を外す事になるのですよ・・・
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(4耐で優勝経験もある某有名日本人GPジャーナリスト曰く)足出し走行は後世に残る革新的な技術だ。
元々ブレーキングに定評のあるロッシは、この足出し走法をするようになってから一段とコーナー進入の鋭さと安定感が増した。(中略)
足を出す効用として考えられるのは、ステップから足を外すことで体重がシートにかかり、リアの加重が増えること。このためブレーキングで突っ込み過ぎた場合に、リアに加重を少しでも移すことでフロントの不安定さを軽減できるようになる。
遠藤智
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(某有名バイクイラストレーター曰く)「バイクはリアで乗る!」のが本来の姿なのです。この“リアステア”を利用して上手く乗る為にこのフォームが必要となるのです。
ブレーキング時に外足で目一杯フォールドをして、こうしてイン足をステップから外すとどうなるのか?と言うと、自然とマシンをフォールドしている外足に、ライダーの全体重が載るのです。 イン側ステップに全く過重せずにライダーの体重をアウト側からイン側に預ける訳です。
これで、初期旋回に入った状態のマシンは、フロントホイルが微妙にインに向いて(セルフステアが効いて)一気に向きを変えるのです。
ブレーキングを深くまで我慢して突っ込めば、アンダーステアは発生してしまう訳で……でも、アンダーを出さずにマシンの向きを変えたい。って場面にこのテクニックを使っていたのです。
要はバイク本来が持つ“セルフステア”を利用して乗っている訳です。村井真
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私が見た限りでは、上に挙げたように言い回しに違いはあれど、『内足をステップから外すと前輪から荷重(加重)が抜け、後輪(シート)に荷重がかかる。だから云々カンヌン〜』が一番の多数意見だったんですが・・・・・。

はいはい(^^;)
もちろん、何処の馬の骨とも分からない私ごときが、これらを全て否定することなんかは出来ませんし、125、250、500ccの2スト、990cc、800cc4ストマシンで世界チャンピオンを9回(!)も獲ってる人のやってることを解き明かそうなんておこがましいのは承知の上で、私なりに今まで書いたこのコンテンツの内容から【内足外し】の効用について考えてみました(上記を読んだ後では「後出しジャンケン」のようで少々気まずいですけどね)。

まずは、『内足を外して【前輪荷重(加重)】を抜く、もしくは減らして【後輪荷重(加重)】を増やす』という解説から、ブレーキをかけることによって減速方向へ加速度をつけ、それによって前方に荷重を移動し、路面に強力に押し付けられ、最大限の摩擦力を発生しているであろう前輪から【荷重】を抜く必要が本当にあるのか?なんてことを考えたりしてみましょう。

バイク乗りなら誰でも知っている通り、ライダーはバイクの上で、ある程度の範囲で身体を自由に動かすことができます。そうすることで【重心位置】はある程度前後左右に移動できるので、「一定速度で走っている場合」はシートの真ん中辺りに乗るよりは前のほうに座ったほうが前輪荷重が増え、後ろのほうに座れば前に乗るよりは後輪荷重が増え、身体を左右に大きく傾ければそれに合わせて左右に移動する・・・・ということは、言葉よりも身体感覚で理解できていることでしょう。
さらにアクセルを開けて加速すれば【慣性力】で後輪荷重が増え、ブレーキをかけて減速すれば前輪荷重が増えたりと、『前後輪荷重の配分』が変化しますね。ここまではまぁ「一般的」な理屈として通用するとしてイイと思います。
そして、ライダーが少々動いたとしても、最終的に『路面に【荷重】がかかるポイント=着力点』はタイヤの接地面となることにも異論は無いでしょう。

現代のスポーツバイクなら、我々でも少し練習すればそこそこの速度からのフルブレーキで前輪に充分過ぎるほど(リアタイヤがポンポン浮くほど)の【荷重移動】をさせることができます。そこで、重いバイクは『強い直進性』を発揮していて(『運動の第一法則』と『第二法則』)、これはバイクが直立状態で前輪がフルロックしても、重心位置が車体中心より左右に大きくズレて前輪が横滑りさえしない限り直進を保つことで実証できます。
やったことがある人には言わずもがなですが、バイクが直立してさえいれば前輪が「キュッ」とロックしようと、リアタイヤが「ポンッ」と浮こうと、短い時間ならワリとどうということは無いんですね。
つまり、(突っ込み過ぎであろうと無かろうと)慣性力の働く速度以上から直立状態で【減速=負の加速度運動】中のバイクは、直立して【加速=正の加速度運動】状態にあるバイクと同様、『力のかかる方向が一定している、安定状態』にあると言えます。
もし「ブレーキをかけると転びそうで怖い=バイクが不安定」と感じるなら、それはタイヤの特性や摩擦力の限界を知らずに、目前に迫るカーブに対して、「もし減速しきれなければ壁に張り付くか、道から飛び出してしまうかもしれない・・・・」という、『乗り手の不安感・緊張感』がそう感じさせているのかもしれません。視線を遠くに、何にも無い広い所で試すと「なんだ、止まる寸前まで意外と・・・・」と感じると思います)

摩擦円 さて、右図は「摩擦円(フリクション・サークル)」とか言いまして、主に四輪タイヤのグリップ力の説明で使われる図ですが、基本的な考え方はバイクでも大きく違いません(ヤマハのMoto-GPマシンを開発をする部署では、「摩擦楕円」を使うそうです。バイクは四輪のように【コーナリングフォース】が強くないですからね)。
タイヤの物理的なグリップ限界を白円=黒実線の範囲と仮定し、制動に目一杯のグリップを使っている時には旋回に割ける摩擦力はゼロで、タイヤをグリップさせたまま旋回するためには制動に使っていた摩擦力を減らし、その分だけが旋回に使えるということを表しています。

図の赤点と赤線は、フルブレーキからブレーキレバーをリリースしつつ左へリーンし、旋回しつつアクセルを開けて徐々にフル加速・・・・という状態を表していますが、タイヤメーカーの実験によれば、ゴムタイヤのグリップは、タイヤ接地部の移動速度とタイヤの前進速度の差を百分率で表した『スリップ率』、これが20%前後が一番良いとされているので、(正確な表現なじゃないけど、「こんな感じ」として)最も理想的・効率的なタイヤの使い方と考えられる、摩擦円の外縁から少し出た辺りをなぞってみました。

図の緑線のように、制動に使う摩擦力(b)旋回に使う摩擦力(a)の和(=図の緑点)が白円内にあれば(実際にはトッレッドゴムが路面に擦れ、揉まれて捩れ、サイドウォールもたわみながら走っているのですが)、一般的には「タイヤがグリップしている状態」と言えます。

我々一般ライダーが峠を飛ばす程度のエネルギーでは、この摩擦円の遥か内側の緑点で走っていると言え、瞬間的に、少しくらいこの円からハミ出たからといって(■第四夜(その2)■や、■外伝■で書いた様に)即転倒ということにはなりません。

また、この円の大きさは一定では無く、タイヤの接地面にかかる物理的なチカラの作用する【総量】も表しているので、『力=荷重の大小(増減)』によっても円の大きさは変わります。もちろんハイグリップタイヤは円が大きくなり、エコタイヤはそれより小さくなります。(誰がコレを考えたのか・・・・偉いもんですね)
力学では物体に「加速度がかかること」と「力が加わること」とは同じことであって、アクセルを開けて加速する時にはその【加速度=慣性力】によって【荷重】が後輪側に多くかかり、前輪より後輪の摩擦円が大きくなり、制動時はその逆になります。加速度が急で、重いバイクほど円は大きくなり、急加速や急制動(もしくはジャンプして)でタイヤが地面を離れてしまえば、タイヤには摩擦する相手がいなくなってしまうので円自体が無くなることになります。

ハイドロプレーニングまた、タイヤゴムの性質と路面の性質に依って自ずと『円の大きさ=摩擦力の絶対量』には上限もあり、円はそれを超えて無限に大きくはなりません。滑りやすい路面だったり、タイヤに充分な荷重が与えられていない=摩擦円が小さければ、そのタイヤの限界前でもスリップ、スライドをします。

運転免許の学科教習で「ハイドロプレーニング現象(アクアプレーニング)」というのを習ったと思いますが、これもタイヤと路面との間に水の膜ができることによって摩擦円が極端に小さくなる=摩擦力がゼロに近くなることで、路面が乾いていれば摩擦円内のグリップする位置にある緑点が、トレッド面の排水が追いつかずに水の膜ができると白円から大きくはみ出てスリップし、ブレーキだけでなくハンドルを切っても何をしても、ただ水の上を滑るだけという現象を表せます。
要は、ドライ路面では絶大なグリップを発揮する=大きな摩擦円を作れるレーシングスリックタイヤも、ウェット路面では摩擦円が小さくなって滑りまくりってことですね。

消しゴム身近な物で擬似体験しようとするならば、消しゴムを上から軽く押さえて横に移動すれば「す〜っ」と紙の上を滑っていきますが、強く押せば「ぎゅっ」と停まり、さらに強く押せば「ずずーっ」っとこすれて字が消える。机の上に油をたらせばどんなに強く押さえても滑っていく・・・・・そんなことをイメージしてもらっても間違いではない(はず)です。

そこで【足出し走法】による『フロント(またはリア)の荷重を逃がす(抜く)』云々ですが・・・・・。

外せども外せども・・・・・ そもそも『制動時にステップから足を外すことで前輪の荷重が抜け(前輪荷重が減って)、リアに荷重が移動する』と当然のように語られるのが、私には腑に落ちないんですよね。

もし『足を外すことで前輪にかかる【荷重】が減る』と仮定するなら、荷重のかかる赤点が円内に入り込んでしまい、限界の摩擦力を引き出せていない・・・・、もしくは、摩擦円が小さくなって使える摩擦力の上限が下がってしまいます。どちらもレースにおいて相手を抜き去ろう、ラップタイムを縮めようとするライダーにとって「マイナス要因」になる思えます。

そして、足を横に出したとしても、(a+b+c)=バイクとライダーの【総重量=質量】は変わらず、出した足も含めて一つの【慣性系】と見なせます。
例えばステップから外した足先が「ポロッ」ともげて何処かへ飛んで行ったとしたら・・・・・。そうなってこそ(c)の重量分が減る=荷重が抜ける(減る)ことになりますが、それでも『制動=マイナスの加速度』によって【荷重】を受ける着力点は、前輪の接地面以外にはありません

そ〜れ「ポンッ」とねMoto-GPマシンとGPライダーの生み出す『負の加速度運動=フルブレーキ状態』というとこれはバイクにとって極限状態なわけで、後輪はホトンド地面に触れているだけ・・・・。【減速G=慣性力】のかかった『ライダー+バイクの質量』=【荷重】を受け止めるのは前輪のみです。そういう状態で、逆に摩擦円が極小になっているリアタイヤに荷重を移しても、摩擦力が低いためにすぐに滑ってしまい減速には役に立たず、「リアを安定させるため」と言っても、そもそも猛烈な減速中=負の加速度が大きい状態で、バイクは既に安定しているのです・・・・・。

『前輪に分配されていた【荷重】をリアシート(後輪)に移す』、『前輪の荷重を抜いて、浮き気味のリアタイヤを接地させる』と、この文章そのものに間違いは無いとして、果たして本当に足を出すことによって前輪の荷重が減り、後輪の荷重が増えるものなのでしょうか?

【慣性力】が働いている中で、バイクとライダーという【慣性系】の総質量が変わらない場合、制動をかけることによって作り出された【加速度=慣性力】を減ずるためにはブレーキを弱めるのが一番カンタンですが、レースで競り合ってる時にそれをやったら相手に抜かれちゃいます。
あ〜ら「フワリンッ」他の方法で前輪にかかる【荷重】を減らしたいなら、『バイク+ライダーの重量』が軽くなれば良いのですが、ガソリンが減ってくれば重量も減りますけど、足を横に出したって舌を出したってチンコ出したって走行中にそれ(=総重量)は変えられないわけで・・・・・。
←ここから右足をステップ外すと『前輪荷重が減る』ように見えるかな?

つまり、そこに生じる【エネルギーの総量】も変わらないわけです。『エネルギー保存則』と言うヤツですね。我々が市販車で峠を走る場合だろうと世界最高峰クラスのバイクとライダーであろうと、地球上に居る限りこの『力学の法則』を無視することは出来ないし、それからは逃れられません。
二つの体重計に左右の足をそれぞれに乗せ、手を腰に当てた場合より、腕を胸の前に伸ばした場合のほうがどちらかの体重計の数値が減じたとしたら、この世界がひっくり返っちゃいますよ
勢い良く腕を上げ下げすれば増減しますけど・・・・・。アレ?これはヒントになるかな?

ブレーキをかけはじめる速度とブレーキレバーを握る力が同じなら、タイヤがグリップしている限りバイク+ライダーの制動という『マイナスの加速度運動が生む【慣性力】という【人工重力=減速G】』の強さは変わりないはずで、『摩擦円の限界=タイヤ性能の限界』でブレーキをかけている状態で、前輪がロックした=摩擦抵抗が減少したという状態にならなければ、【荷重】を抜く必要はないと思えます。もしそうしなければならないとしたらそれは『失敗コーナリング』であって、競り合いの相手を抜くことはおろか、ラップタイムを縮めることもできないでしょう。
ロッシの場合も、前輪がロックしたとか突っ込み過ぎたとか、『緊急の対応策として足を外している』ワケではなく、ブレーキをかけ始めた直後からリーン開始まで『出しっ放し』です。ターンイン手前の、前輪から引き出せる摩擦力の全てを速度を落とすことに使いたい(使っている)所ですから、バイクは直立し、リアタイヤが浮いてはいても、どちらかに大きく滑って行こうとしているわけでもなく・・・・・

まぁ我々が峠を走る程度の速度域なら摩擦円の遥か内側ですから、ちょっとくらい円が小さくなったとしても、前輪にかかっていた【荷重】の幾ばくかを後輪に配分してやれば、その分は「安全マージン」となるでしょうけど、はたしてこの足を出した状態でのブレーキングは、出さない場合のブレーキングに比べて『フロント荷重(加重?)を減じ、リア荷重(加重?)を増やす効果』があるんでしょうか?
う〜ん・・・・んんん???。
こう考えてみると、どうもこの「前(後)輪荷重がどう〜のこ〜の」という解説は、ウッカリ目を滑らせると理論的なように思わせつつも、やっぱり【荷重(加重)】の意味をよく理解できていなかったり、前提や設定条件が途中で変わってしまっていたり、別々の事象を成り行きで定型化している『ライテク用語』でそれらしく繋げているだけだったり・・・・。どうにも「怪しい説」というか、「眉唾モン」に思えて仕方がなくなってしまいました(笑

またまた長くなったので、二つに分けます。以下■異聞(追加・弐)■
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2011年5月・参考動画の変更に伴い、解説に修正を加えました。

■異聞(追加・壱)■ 究極奥義【内足外し】

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