■第三夜■ 崩壊の序曲

2009/05


まずは■第二夜■で使った「机」を思い出してください。

(A):右手の平に向かって力を込め、机を『グッ!』と押し付ける
  身体の重心を支点として回転する力=トルクをかけ、その反作用も生まれる
(B):上体を右手の上に延ばして体重をかけるか、上体を右に傾ける
  両手足に分布していた荷重を右手に移動した。もしく加重した
・・・・・というアレです。
一本足の机を直立したバイクだと見立ててもそう大きな違和感は無いと思いますが、バイクが定速で直進走行していればその【慣性力(真っ直ぐ進み続けようとする力)】が生まれるので、そのチカラは当然働いていることとして、バイクに当てはめて考えてみましょう。

車体がどちらかに傾けば、ステアリングは速度や傾き具合や応力、慣性や重心位置によってどちら側かに切れてバランスしようとする・・・・・。この、『ステアリングが切れてバランスする』というのはバイクの動きにとって大変に重要なことなんですが、一度に書くと混乱するので■第五夜■辺りで書こうと思います。

まず今回は、直進しているバイクとその車体(後輪)に限って考えてみます。

下図ではリアタイヤしか描いていませんが、バイクの構造上後輪は車体と同角度で傾くので、【車体=後輪】と考えたほうが、今後の解説も分かりやすいでしょう。
ここから「右へ曲がろう」とするとします。
直進状態ステップへ入力・加重 さて、(A)のように【右のステップを足先で下に力を込めて踏んづける=加重・入力】をすれば、タイヤを支点として左右に傾くバイクは右側に僅かに倒れようとします。
それと同時に、シート上面に乗せた内腿から荷重が抜け、上体を左側に起こそうとする反作用も起きるので、バイクが直進していれば一瞬そちらに倒れますが、これだけでは(体重計の例と同じく)すぐに荷重の分布状態は直進状態へと戻ります。
タイヤが倒れると路面との接地点に【スリップアングル】や【キャンバースラスト】という、タイヤが倒れたほうに向かって転がろうとする力が働くので旋回のキッカケにはなりますが、それは■第五夜■で触れるので今は考えずに話を進めます。

では外足は外足でも、ステップでは無くモモの部分を使うとどうでしょうか?
モモを内へモモを下へ ここで新たに問題になるのは、『どの方向に荷重、加重(入力)するか?』です。
左図のように足のモモを外から車体に押し付けるような【加重=入力】をすれば、はどうでしょう?
バイクは右に傾きますが、ライダーの上体は左に逃げ、タイヤの接地点も左に逃げるような反作用が起きます・・・・・。立ち姿勢の図で書いた「おじぎ」と似たような現象ですね。

右図のように左足のモモをグッとシートの左側下方向に押し付ければ、ライダーの上体は右やや上に向かって伸び右足のモモが浮き気味になるので、バイクは右では無く左へ倒れようとします。ここでは「右」に行きたいのですけどね・・・・・。どちらも『このまま加重をかけ続ける』とやがて倒れてしまうのでどこかでソレを止めなければなりませんが、その為にはとりあえず【加重】をかけるのを止める必要がありそうです。

お尻へ荷重移動 では、(B)のように【体重を右側に乗せる=荷重をシート上面右側に移動する】とどうでしょう?
決して素早い反応はしないけれど、そのまま右に旋回しようとするはずです。
想い出してみてください。
概ね法定速度で走る車の後ろに付いて、ワリと大きなカーブを曲がる時には特に意識せずとも、「誰でもこうしている」はずです。
再び机の実験を思い出して欲しいのですが、ここで行っている左右の【荷重移動】は、上半身の重心位置を、バイクの重心位置より右に移動していることによります。

つまり、ステップでもシートでも

直進しているバイクの左右どちらかに加速度をつけて【入力・加重】するか、
【重心を移動】すればバイクはそちらに倒れようとする

ということになると思います。
言うまでもなく、これは『運動の法則(運動の第2法則)』=「物体が力を受けると、その力の働く方向に加速度が生じ、加速度は力の大きさに比例し、質量に反比例する」・・・・というヤツです。なので、これらを「なぜそうなるの?」と問われても、私にも分かりません(笑)

押して歩く場合を除いて、直進状態のバイクをコーナリング状態=継続的な車体の旋回状態へ移行させるには、進行方向に向かい、『曲がろうとする方向に車体を傾け、路面に対して車体の重心位置を移動すること』が最も有効だと言えます。
これはMoto-GPマシンだろうがオフ車だろうがアメリカンだろうが例外はなく、『例外が無い』ということは、これは一つの【基本】だと認めて良いでしょう!・・・・・って、「これだけ長々書いて、そんな当たり前の結論かよ!」というお叱りが聞こえてきそうですが、それはスルーします(w

その為には皆さんご存知の通り、上記の方法が(敢えてどれが「正しい」とは言いませんが)ポピュラーでしょう。これ以外にも「バイクを傾けるという効果」を得るためには他にも幾つか方法がありますが、それは別の章で書きます。
以上のことから、

極低速を除き、コーナリングを開始しようとする段階では、
曲がろうとする側の反対方向にバイクを傾けてもそちらには曲がらない

ことが言えると思います。またまた当たり前過ぎて腰が抜けそうな結論が出てきましたねぇ(w

つまり右に曲がろうとしたら乗り手が意図して右へ【重心位置】を変えることで、【荷重】を右に移動させなければならないことになります。
「それはいいけど、『コーナリング中は外足荷重(加重)が基本!』はどうなった?」そうでしたね・・・・・。(実は、既に「ホトンドの答え」が出てしまってるんですが・・・・)

実際、バイクが走行中に受ける、または発生する【チカラの方向】は左右方向だけでなく、前後方向や斜めからのもあったりして、常に様々な方向から様々な【チカラ】がかかっていますよね。

その中から、次回は【慣性力】について考えまが、その前に■閑話休題■でもどうぞ


■第三夜■ 崩壊の序曲

Back to Site Top


"Aquilarium" AKIRA YOKOYAMA's Web Site


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送