■外伝■ 晴天の雨傘

2009/07


ツーリング途中、天気も良く、前に車もおらず、道の状態も良いとくれば自ずとペースは上がります・・・・・、と言っても無事に家に帰りつくのがツーリングです。自身の限界走行の60%以下程度の、安全マージンをタップリ取った、コーナーを余裕で楽しむ程度のペースです。
とあるブラインドコーナーに進入したら、クリッピング辺りに道端の湧き水が路上まで細く流れ出ているのが見えました・・・・・。

このように例えブラインドコーナーに小スライドの要因となるものがあっても、「タイヤが滑るまでそれらにまったく気づかない」ということは無いと思います。
「気づかなかった!」「見えてなかった!」としたら、それはそれで別問題として・・・・・。それらを見つけたら、「ああ、ちょっと滑るな・・・・」と思い努めてリラックスし、「一瞬滑るだろうけど、特に何もしなくて良い」という、【心の準備】だけで充分です。
もしアクセルを閉じている時だったなら、それらを踏み越える一瞬前に(■第四夜(その3)■の図(3)のようなアクションで)車体をホンの少し起こし、アクセルを開けて加速状態で通過できればベストです。

私自身何度も経験していますが、オンロードバイクに乗っていて程ほどのペースであれば、例えば濡れた白線やマンホールに乗って一瞬リアタイヤが滑っても、身体の力を抜いて「為すがまま」にしていれば、バイクも人間の身体も自然に、勝手にバランスしようとするようにできているので、「浅いリーンアングルでも【外足荷重】していなければ、タイヤが僅かでも滑った場合ライダーは為す術がなく、ほぼ100%の確立でスリップダウンする!」ことを前提にしてコーナリングを考えるのはちょっと無理があるというか・・・・飛躍が過ぎるように思えます

レコード:5 派手にハングオフし、タイヤの限界ギリギリで走っているならともかく、ツーリングペース程度のリーンアングルで少々リアタイヤが滑ってもバイクは自動的にバランスを取り戻そうとしますし(レース映像で、転倒してライダーを振り落としたマシンが直立し、ストローバリアまで走る映像を見たことがあると思います)、なによりライダーは「木偶(でく)の坊」じゃないのですから、常識的に考えれば身体は何がしかの反射運動をしてバランスを取ろうとします。もし、この程度で手の平を返したようにライダーが転げ落ちてしまったなら、その人はきっとバイクの上で磔(ハリツケ)にされてたか、居眠り運転でもしてたんでしょうね。

そんなシーンで一番大事なのは、「滑る!コケる!もうダメだあっ!」と思って身体を硬直させ、自分を放棄しないことです。

ここで「ああ〜〜、滑るよ〜〜〜!コケたらどうしようどうしようコケるコケる!絶対コケる!!」とパニクって身体を硬直させたり、滑った後すぐグリップを取り戻し、バイクは何事も無くバランスしようとしているのに、ライダーが「外にはらむ!ガードレールに当たる当たる当たる!絶対当たる!」とそちらを見てしまい、アウトにはらんでガードレールに接触転倒、もしくは反射的にブレーキを強く握って(踏んで)スリップ転倒・・・・なんてことならアリガチですが、これはライディングテクニックの問題では無く、落ち着いて状況を判断できない状態に自分で自分を追い込んだ、乗り手の【意識】の問題です。

■第四夜(その1)■に書いたように、【向心力(求心力)】が勝てばバイクは旋回半径を小さくし、■第三夜■に書いた通り左右どちら側かに【荷重】をかければバイクはそちらに傾こうとするので、もしラインがアウトにはらんだら努めてコーナー奥に視線を投げ、少しアクセルを緩めて、それからリラックスしてコーナリングを再開すれば良く、またはバイクをなるべく立ててブレーキをかけ、自分と他の交通の安全を確認できたなら道端に停まってしまったって別に構わないのです。
そういう判断が咄嗟に出来るようにする為にも、滑る前に『ホンの少しだけ』【心の準備】をするということです。
コーナー:5の1 今まさにコーナリング真っ最中の車体に外足で意識して【荷重】【加重・入力】し、【遠心力】が勝つような、バイクが起きようとする方向の力をかける行為は旋回力を弱めるのに大変効果的でもあり、「滑ったら怖い!」からといって全てのコーナーでスリップもしていない内からそれに備え、意識して【外足荷重(加重)】をすることに何の得もありません。

書くのもバカバカしい話ですが、モーターサイクルがこの世に生まれてから現在に至るまで、「コーナーリングする!」と言うことは「そのカーブを曲がりたい!」わけで、何事もなく一瞬で通り過ぎてしまいう状況のためにわざわざ「曲がり難くする」ような力をかけるのは、それこそ『本末転倒』ですね。

ただし、これは『外足荷重せずに内足荷重しろ!』と極論を言ってるわけではないので念のため・・・・・。
コーナリング中、強く旋回させたい時と場合に敢えて旋回力を弱める行為や、荷重を分散させることを意識してする必要は無いということで、逆に言えば「それが必要な場面」であるなら、別にどちら側のステップを踏んづけたって踏んづけなくたって一向に構わないんですね。

試しに安全なところで、旋回中にシート上面イン側へのもたれかかりを意識しながら、内足のヒザ頭をイン側のハンドルバーエンドに近付けるようなイメージで、イン側ステップから【荷重】を抜いてみてください。バイクはくうっと、内向力を高め、「さらに曲がろう」とするはずです。

これは普通に考えれば単にそれまで内足ステップや外足に分散していた荷重がシート上面イン側に集中したことで、バイクの重心より内側に【荷重】が移動しただけ・・・・・■第二夜■で描いた、しゃがみこむ【抜重】を内足だけしたことになります。これを「内足に荷重をかけていない!だから外足荷重だ!」と言う人はまず居ないと思います。
コーナー:5の2

シート上面イン側に【荷重移動】すれば(今まで書いた通り)バイクがそちらに倒れようとするのは理に適っていますし、車体の内側・・・・・タイヤ接地面より内側に多く【荷重】が分布されれば向心力が勝ってリアタイヤが内向力を強め、リーンアングルを深めればステアリングも切れて【旋回力=コーナリングフォース+キャンバースラスト】が高まるのも道理ですが、この時外足に【荷重(加重)】すればバイクは起きようとします。
もしこれで本当にバイクが「さらに曲がろうとした=旋回半径を小さくした」ならば、それは外足に【荷重】されていないことが現象として証明されたことに他ならないわけです。

いずれにしても、コーナリング中に力の方向が瞬間的に180°入れ換わったり、停まってる状態=ゼロから一気に、唐突に滑り出したわけではないので、人間(バイクも)はそういった「既に加えられている力の方向」(この場合は【遠心力】と【向心力】の向き)で、その力の大きさが少しくらい変わっても「自然とバランスを取る=対応が取れる」ものですから、案ずるには及びません。

もちろん速度が上がってバンク角が深くなるほど、旋回Gが大きくなるほど、『発見→判断→対応』の遅れが転倒やコースアウトの可能性を高くしますが、それならいっそ速度を抑えてゆっくり走ってしまったほうが得策でしょうね。
だって、「滑ったらどうしよう・・・・」「コケたらどうしよう・・・・」と、ビクビクしながらバイクに乗ったり、あるいは無理に頑張って「速く走らなきゃ!」と何かに急き立てられるように走ってもちっとも楽しくないし、そうやって余計な力を入れて走ってたらすぐ疲れちゃいます・・・・・。「疲れる」ということは判断力を鈍らせ、本当に「イザ!」という時の対応も遅れるということです。

電車に乗ったことがあれば分かる通り、最も身体のバランスを崩しやすい加速から減速に力の方向が変わる瞬間も、カーブに入る瞬間も、その程度のチカラの変化なら大多数の人は意識せずとも自然と【荷重移動】してバランスを取り、吊り革を持っていなくてもいきなりコケたりしませんよね?!(中にはコケる人もいるかもしれませんが・・・・)
電車に乗っている間中、「もしかしたら急ブレーキをかけるかもしれない・・・・」「ひょっとして脱線するかもしれない・・・・・」と常に身構えている人はいませんし、そんな要らぬ心配をしてたらすぐ疲れちゃいます。「疲れる」ということは判断力を(以下略)。

「コーナリング中は外足荷重が基本」を“是”とする方々はその理由として異口同音に、『タイヤが滑ったときに立て直しが出来ないから』…つまりは『安全に走るため』と解説をされていますが、そういう方々は日常的にGPライダーばりの限界コーナリングを一般の峠道でしているんでしょうか?
それとも、タイヤが少しでも滑ると一気にスリップして転倒する確率100%な、劣悪な路面状態の道ばかりをず〜っと走っているんでしょうか?

もちろん「外足荷重は何時如何なる時も絶対にしちゃイカン!」なんてことは言えっこありませんけど、例え躍起になってコーナーを攻め立てなくとも、ライダーが見た限りクリアな路面においても、「安全のため、コーナリング中は基本的に外足荷重だ」と言うことは、イコール「あえてバイクの旋回力を弱めるように運転しなさい」と言っているに等しいと思うんですが、さて・・・・・・。
バイクが正に旋回している最中に『紛れもなくバイクを曲げない(曲がらない)効果のある外足荷重』をすることが、果たしてどれほど『安全』に繋がるんでしょうか?

私にはどうもそこが合点がいきません。

リスクを承知でタイヤの性能限界ギリギリで(時にはそれを超えて)走るレースと違い、我々が日常体験するツーリングペースでならこれくらいの挙動の変化でバイクが大きくバランスを崩し、「あっ!」という間に転倒、なんてことは絶対に無い・・・・・とは言い切れませんが(笑)、ツーリングペースで走行中にもしこの程度のエネルギーの落差があり、もしライダーの対応が少しくらい遅れたとしても、休憩中に仲間内で「さっきちょっとタイヤが滑っちゃったよ〜(笑)」と、むしろ話のネタに出来るというもの。
もしそれでもコケてしまったり、アウトにはらんでガードレールに刺さったりしたらば、それはそうなることを予め察知し、避けられなかった乗り手の自業自得としか言いようがありません。
そうならないよう、速度を落とすなりラインを外すなりは乗り手の判断に全て委ねられているのですから。

この世にコケないバイクは無いですが、突発的なアクシデント以外で、走行性能の劣悪化を招く危険な改造(停車時の足付きを良くしようと無分別に大きく車高を落としたりとか)をせず、ちゃんと日常整備をしてあるなら、

自然の法則に逆らわずに走っている限り、
バイクが突然勝手にコケたりすることはありません。

なんともありがたいことに、私のような「少々ヘタッピな乗り手」でも安心して走れるよう、世界中のバイクメーカーさんは昔っからそうしてバイク自体もバランスを取って走れるようにちゃんと造ってくれているのです。

転倒後、ライダー無しでバイク自律走行
http://www.youtube.com/watch?v=2CWQE5UbuqQ


それがコーナリング中であろうと直線であろうと、何もする必要が無い状況で常に何かをし続けるのは体力と精神力の無駄使いです。もちろん気を抜いてダレていなさいということではなく、何もしなくてもイイ時は何もしなくてイイんじゃないでしょうか?
「何かあった時のために常にその心構えをしつつリラックスする」ことと、「何かあったら大変だと常に緊張して身構える」ことは同じようでまるで違うことは、たいていの人は経験則で分かっていると思います。

では放って置いても立ち直る浅いリーンアングルでのちょっとしたスライドではなく、大エネルギー下や特殊な条件下でのテールスライドはどうでしょう?
我々一般のライダーにとっては少々非現実的な状況ではありますが、戯れに考えてみましょうか・・・・・■異聞■
一般公道のライディングにはまったくと言って良いくらい役に立たないので、悪しからずw

■外伝■ 晴天の雨傘

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